そもそもの始まり

2005年5月のある日、僕たち夫婦は学生時代からの友人N夫妻に誘われてRさんのログハウスにお邪魔した。

かねてより噂に聞いていたそのログハウスは、富士山の西麓、朝霧高原の広大な牧草地のど真ん中に、まるでおとぎ話の挿し絵のような風情でポツンと建っていた。
実際には、サイズ、クオリティーともに日本規格を大きく逸脱した、それはそれは見事な巨大ログハウスなのだが、周りのロケーションがこれまた日本規格を大きく逸脱した「見渡す限りの大草原」なので、この雄大な景色の中では流石の巨大ログハウスも「ポツン」と控えめに建っているような可愛らしさに見えてしまう。
目の前に聳える富士山、遠くに霞む森、その後ろをぐるりと囲む山々、そして、どこまでも広がる牧草地。 自然の景色以外、自分達の視界にはな〜んにも見えない。
ログハウスももちろん素晴らしかったが、それよりも「こんな雄大な景色の中に暮らしている人たちが現実にいる」ということの方に僕たちはすっかりヤラれてしまった。
これは、まさに僕たちが夢にまで見た暮らしではないか!!
どうすればこんな場所に住めるのですか?




Rさんが言うには、富士山の周りでもなかなかこういう「見渡す限りの大草原」に家を建てるのは難しいそうだ。
そもそも、富士山周辺は国定公園のような扱いなので、基本的には家を建てることが出来ない。環境の保護か、もしくは景観の保護か、無秩序に開発の手が入ることを規制しているのだろう。
たまに無許可で家を建ててしまう豪傑もいるにはいるが、そんな人達はやはりたまに検挙されたりしている。
新しく家を建てることが出来るのは分譲別荘地の中か、もしくは昔から人が住んでいる集落の中に限られる。
ただ、ヨソモノが何のツテもなく昔からの集落に入るのはそれなりに勇気がいることだろうし、それに集落には当然沢山の人が住んでいるので、いかに富士山の近くと言えども大自然の中の暮らしと言う訳にはいかない。
自然の中での暮らしを夢見る僕たちのようなヨソモノが住めるのは、やはり別荘地という選択になってしまう。
けれど、現実には別荘地にも家が建ち並び、郊外の住宅街とさほど代わり映えのしないロケーションになってしまうようだ。
もちろん都心に比べればかなり広い庭を持つことも可能だろうが、それでも見渡す限りの大草原のような良好なロケーションを見つけることは難しい。

Rさんがログハウスを建てた場所はもともと牧場だったところで、幸運にも廃屋が建っていたそうだ。
後で知ったことだが、既に建物等が建っている土地は「既存宅地」として例外的に家を建てることが認められている。
だから、もし仮にあの場所に廃屋が建っていなければ、Rさんもあの素晴らしいロケーションにログハウスを建てることが出来なかったのかもしれない。
「自分達はこの場所に出会えて本当にラッキーだった」Rさんは笑顔で言った。
羨ましい限りである。

その夜はN家に泊めてもらったのだが、話の中心は今日見てきた素晴らしいロケーションについてだった。
どうすればあんな素晴らしい環境に住めるのだろう?
他にもあんな場所があるのだろうか?
今まで大自然の中での暮らしなんて所詮夢物語だと思っていたが、現実にそんな環境で暮らしている人を知っしまった今となっては「もしかしたら自分達にも可能なんじゃないか?」なんて気にもなってくる。

「ネットで調べてみようか?」 Nが言い出した。
え〜、無理無理、絶対に見つからないって。
Rさんだって苦労して土地探したって言ってたじゃない。
そんなんで簡単に見つかったらみんな住んでるよ。
否定的な僕の意見など全く聞く気もないNはどんどんキーワードを入力している。
「え〜と、朝霧高原周辺でしょ、それから売地と・・・」
無理無理と言いながら実は僕も内心ちょっと期待している。

「結構あるよ〜」
え、なになに、そんな簡単に見つかっちゃうの?
あらら、結構沢山見つかるじゃない。
でも、どうせロクでもない土地ばかりでしょ。
ほらよくあるじゃないですか、原野商法。
家を建てれないような土地を宅地だって騙して売っちゃうヤツ。
あんなのに引っ掛かったら最悪だよね。
売る方も売る方だけど、買う方も買う方よ。
ヤダねー、そんなの見つけて喜んでるよ、この人は。
どこまでもネガティブシンキングな僕である。

「あ、ここイイじゃん。ここ知ってるよ、スゲーイイとこだよ。草原のど真ん中だよ。お、スゲー500坪だってよ。既存宅地だってよ。家建てれるじゃん。お、廃屋付きだってよ。廃屋に住めるじゃん。イイじゃん、イイじゃん。ここに住めばイイじゃん。ここ買っちゃえばイイじゃん。イイじゃん、イイじゃん。」
イイじゃん、イイじゃんて言われてもね〜。
そんなに簡単に見つかるとは思っていなかったので、僕にも心の準備ってモノが・・・
おいおい、その土地、ホントに大丈夫なのか?
ていうか、買えばイイじゃんって、買えないよ。
たしかに今日Rさんの暮らしっぷりを見て「もしかしたら自分達にも可能かな?」って、そりゃ少しは心も動いたけどさ、でも考えてみたら土地買うお金なんてどこにあるのさ。
まあ、大自然の中での暮らしなんてのは所詮夢物語ですよ、夢。
Rさんのように既に地位も名声も得た人達だけが叶えられる夢ですよ。
ありがとうRさん、ありがとうN、 良い夢を見させて頂きました。
じゃ、今日はこん辺でお開きってことで・・・

と、思ったのは僕だけのようで、Nはもとより、ウチの妻までがキャーキャー興奮している。
「イイじゃん、イイじゃん、明日見に行ってみようよ。」
「うん、そうしよう、そうしよう。」
え、マジですか?見に行っちゃうんですか?
そうしよう、そうしようって、あなたまで何言ってるんですか?
見に行ってどうする気ですか?言っときますが、行っても無駄ですよ。
だって、そんな土地買うお金、ウチには全然ないですよー。

「じゃ、明日の朝、娘を保育園に送った帰りに、みんなで見に行ってみよう。」
ちっともノリ気じゃない僕のことなど全く気にしていないNは、さっさと明日の予定を決めてしまった。こういう時のNは本当に決断が早く、しかもかなり強引である。
ついでにウチの妻も脳天気なタチなので、すっかり盛り上がってる。
みんなが盛り上がってるのに自分一人盛上がれないってのは、これはこれでちょっと悔しい。
じゃ、みなさんがそんなに盛り上がっているのなら、一応、見に行くだけは行ってみましょうか。あ、でも本当に見に行くだけね・・・

こうして、翌朝、Nの娘を保育園に送り届けた後、僕たちはその土地を見に行くことにしたのである。
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by fujiyama67 | 2006-01-28 03:23 | 家づくりの記録


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