土地を探して・・・

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翌朝、N家の娘を保育園に送り届けた後、僕たちは早速その土地に向かった。
昨晩、ネットでこの土地を見つけた時、Nにはそこがどの辺りかピンと来たそうだ。
Nの読みだと、「娘の通う保育園からそう遠く無い所にパラグライダーの着地場になっている草原があるのだが、たぶんその草原の片隅ではないか」という事だ。

ここで少し説明をしておくと、朝霧高原は実は知る人ぞ知るパラグライダーのメッカで、休日ともなると沢山のパラグライダーが空を舞う光景が見られる。
パラグライダーは高い山の上から飛び立ち、フワフワと宙を舞った後、地上に帰還するのだが、朝霧高原には彼等の為の滑走路(?)と着地場が何ケ所かある。
滑走路は富士山のちょうど西側に位置する山々の上にあり、着地場はその山の麓に広がる草原だ。
ネットで紹介されていた土地周辺の写真が、パラグライダーの着地場になっている草原の景色にそっくりだとNは言うのである。

保育園から車で数分。案内されたその草原は周りをぐるりと山々に囲まれ、まるで隠れ里のようなのどかな風情だ。
すぐ近くを国道が走っているとはにわかに信じられない。このあたりは国道から一本奥に入るとどこもこんな感じなのかな。
その日は平日だったのでパラグライダーは飛んでなかったが、着地場なのだろう、なるほどだだっ広い草原だ。
着地場の周りは牧草地なのだろうか、背の高い草が風に揺られている。
その草原を取り囲むように森が広がり、その後ろに山が近づいている。 ちょっとした別世界だ。
天気が良かったこともあって、気ノリのしていなかった僕もすっかり嬉しくなってしまった。
おいおい、本当にこの草原の片隅に例の土地があるっていうのか?
いやー、ここに来るまではそれほど期待してなかったけどさ・・・
ちょっとこの景色、出来過ぎじゃない。



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「たぶん、この着地場の向こう側だと思うんだよね・・・」Nが言った。
「車で一周してみようか?」
着地場をぐるりと囲むように牧草地が広がり、その牧草地をさらにぐるりと囲むように農道が一周しているらしい。
目指す土地はその農道沿いにあるのではないか、とNは言うのだ。
昨晩、ネットで調べたところによると、その土地にはたしか廃屋が建っているハズである。しかも、二棟並んで。
周りに家らしきものが一軒もない草原、二棟並んだ廃屋を見つける事などわけないだろう。
よし、目指せ廃屋!!
僕たちは廃屋を探しその農道を一周した・・・

ところが、一周しても全然それらしき廃屋が見つからないのである。
「あれ、おかしいな〜、絶対ここだと思ったんだけどな〜」
そうこうしてる間に、もと居た場所に戻ってきちゃったぞ。
お〜いNさんよ、本当にここでいいのか?
もしかして、全然見当違いの場所を探してるんじゃないだろうな?
しかし、Nは全然メゲていないようである。
「よし、もう一周してみよう」

たぶん、今走っている農道から少し奥まったところに廃屋は建っているのだろう。
そして、その廃屋は人目につかないようひっそりと隠れるように建っているのだ。
だからこそ、今まで買い手も付かず、僕たちに見つけられるのを長い間じっと待っていたのだ・・・
どうしてもこの草原の一画に目指す土地があると信じたい僕らは、とりあえずそういう自分勝手な結論に達した。
だから、今度はさっきよりもゆっくりと車を走らせた。
もう目を皿のようにして、僕も、妻も、Nも、かなり慎重に、獲物を探すハンターのように、辺りをキョロキョロ。

「あ、あそこに建物が!!」Nが叫んだ。
農道からかなり奥まった所にかすかに家らしきものが見える。
「お、道らしき形跡があるぞ。このまま車で入ってみよう!!」
言い忘れたが、Nの車は4駆である。道らしき形跡があれば、何の躊躇もなくガンガン入っていく。
それにしても、この道ちょっと狭くないっすか?
「平気、平気。だって、道があるじゃん。」
言い忘れたが、昨晩ネットで調べたところによると、その土地までは一応ちゃんとした道が通じているらしい。
「長い間使われていなかった道は、今やケモノ道と化しているのだ」というのがNの理屈。
しかし、これは人ひとりがやっと通れるかなって感じの、ほとんど草をかき分けた程度のケモノ道ってレベルじゃないすか。
それに、ほれ、行き止まりですよ。
目の前に建っていたのは、何の事はない、牧草地を耕している農家の方の物置だった。ブブー。

農道に引き返し、またゆっくりと車を走らせた。
考えてみれば、さっきは廃屋ばかり探していたけどさ、どうせ廃屋は奥まったところにあって見つけにくいんだから、今度は廃屋まで通じている道の方を探せば良いんじゃないかな?
そう発想を切り替えてみると、なるほど今まで気づかなかったが、農道から枝分かれしてる小道がちらほらとあるではないか。
たいていはケモノ道程度の小道だが、何本かは車で入る事もできるちゃんとした道もある。
そのウチの一本、一番気持ち良さそうな道の入口に車を止め、今度は歩いて探す事にした。

その道は牧草地のど真ん中を突き抜けるように走っていて、少し高台になっている場所からは草原全体を見渡す事ができた。
今一周してきた農道が遠くの方にぐるりと見えるし、向こうの方にはパラグライダーの着地場も見える。
気持ちの良い風に吹かれ背の高い牧草が波のように揺られている。まるで、牧草の大海原。
こんな光景、今まで一度も見たことがない。夢のような光景だ。
昔見た映画のワンシーンを思い出してしまった。
タルコフスキー監督の「鏡」の冒頭のシーン。女が一人、草原を見下ろしている。すると遠くから一人の男が歩いてくる。カメラはしばらくその男が歩いてくるのをただじっと写している。その時、風の音がする。はるか彼方から、まるで波のように、風が草原を渡る。男を追いこし、風は女の方まで吹いてくる。心に残るシーンだ。
そんな映画のワンシーンのような光景。
結局、お目当ての廃屋は見つからなかったけど、なかなか貴重な体験をさせてもらった。
ここは本当に素晴らしい場所だった。

すっかり散歩気分で車に戻ると、あれ、反対側にも道があるではないか。
さっきは気づかなかったが、農道を挟んで少し向こうに、今歩いた道とは反対方向に行く道がある。
ついでに向こうの方も少し散歩してみる?
さっきの素晴らしい体験のお蔭で気分はほとんどピクニックである。
その道の少し先に、うっそうと繁った森が見える。
よし、あそこまで行ってみよう。

農道から50mくらい歩いただろうか、うっそうと繁った森に近づくと・・・
あれれ、森の中になんか建物が見えないか?
「あれ、廃屋じゃない?」
「あ、ほんとだ!!」
たしかに、廃屋が森の奥に建っている。しかも二棟並んで。
僕たちは遂に目指す土地に辿り着いたのだ。

しかし、この廃屋は農道からは全然見えないはずですよ。
だって、ほとんど森にのみ込まれちゃってるんだもん。
ところで、どうやって廃屋に近づこうか?
薮化したその森に入っていくのはかなり大変そうだぞ。
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by fujiyama67 | 2006-02-09 03:33 | 家づくりの記録


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